MSN産経ニュース新春インタビュー
1月11日
■ 走り勝つことと1対1のボール際で競り勝つこと、最後はキックの精度
- 充実の2008年
- W杯出場を決めた6月が大きなポイントだった。今の日本の力からすればそんなに驚くことはないとは思うが、やはりW杯はサッカーをやっている者にとって夢の舞台。千何百人いるJリーガーの中で本当にひと握りの人間しかかかわれない。それを成し遂げた選手たちは誇りに思う。
- それと、オランダ遠征。トップレベルの国とアウェーで2試合もやらせてもらえた。ものすごく大きなことであり、1つのきっかけだった。われわれはベスト4を目指している。そのためにはこういうことをしなければならないと考えていたが、残念ながら日本でベスト4に行ったことがある人はいない。あくまで推定だった。それを本当かどうか体感してみようというのが、あの遠征だった。
- そこで、本当に当たっているな、という実感を持ったとともに、はっきりとした道筋が見えた。僕だけではなく、選手たちが感じ取ってくれた。欲を言えば本当に強いチームともう1試合くらいやりたかったが、非常に充実した1年を送れた。
- 壁が選手を試す
- 現時点でかなりいい線まで来ていることは確かだが、まだ一線は越えていない。「日本もなかなかやるじゃん」で終わってしまうところ。客観的には1次リーグE組で一番下といわれるのが当たり前で、あるチームには10回中3回しか勝てないだろう。少なくとも五分五分近くまで持ってこないと。具体的には走り勝つことと1対1のボール際で競り勝つこと、最後はキックの精度。この3つのポイントを今より上げていくことが必要だ。
- ただ、これは残り半年で十分超えられる。自信過剰ではない。この前も国際サッカー連盟(FIFA)の取材で「あなたのコンフィデンス(自信)はどこからくるんだ?」と聞かれたが、僕だけではない。選手もスタッフもみんなが「行ける」という感覚を持っている。
- われわれが要求していることは並大抵のことじゃない。サッカーにすべてを賭けて、やるべきことをやり続けられるかどうか。モチベーションを持ち続けられるかどうかという壁が、いろんな場面で出てくる。
- 壁というのは邪魔するためにあるのではない。マスコミだったり、誘惑もたくさんある。それは本気でベスト4を目指しているかどうかを試しているだけ。その中でどういう気持ちで取り組むか。選手には何かそういうことがあったら「今試されている」と思え、そして本気でやるのかどうか考えてくれと言ってきた。
- 本気になった選手は正直、自分でも驚くほど。選手にも波があり、ちょっとした壁に当たってなえてしまうこともある。それを乗り越えて戻ってきてくれる選手もいる。だから常時何人とはいえないが、僕の感覚では昨年の今ごろ数人だったのが10人以上、15人以上になってきた。
- 本気の23人で
- W杯でわれわれの目標を達成するためのメンバーを選びたい。上からいい選手を選ぶわけではない。総合的な判断になる。選手には個性がある。メンタルは強いけど下手くそな選手も必要だろうし、メンタルは弱いけどめちゃくちゃ走る選手もいいかもしれない。すべてがそろった選手がいれば理想だが、そんなチームは世界中にない。
- ただ1つだけ、「日本代表どうでもいいや」「選ばれたら行ってやるよ」とか、W杯に出られればいいという程度の強いモチベーションのない選手は入ってこないだろう。ベスト4を本気で目指している選手、世界で「ちょっと一発やってやろうぜ」という気概を持った選手。そういう選手に自然となるのではないかと思う。
- 軸は固まってきた。かなり高い意識を持っている選手がいる。「代表に入ってみたいな」ぐらいの気持ちでは練習についてこれない。オランダ遠征に何人か初めての選手が入った際、激しさと速さに最初びっくりしていたから。そういう意味では、新陳代謝は必ずあると思うが、今のメンバーに割って入るにはかなり強い気持ちと何か特徴を持っていないと大変だろう。
- 2度目のW杯監督
- 1998年フランスW杯とはまったく違うだろう。12歳年を取り、12年間でいろんな経験をした。ただ当時はあれがベストだった。全然後悔していない。当時を踏まえてこうしようと、98年を思いだしたこともない。
- 今回は今回の、自分なりのベストを尽くす。それがどういう形になるのかは自分でも分からないが、ただ僕は僕。急に変身できない。僕以外のやり方を背伸びしてやろうとしても駄目だろうし、今の自分なりの自分に合ったやり方をやれば結果が出ると信じている。
- 初詣には行きますよ。家族が幸せになるということが自分の中で一番なんで、他はあまり頼まないけど。W杯? 「多分僕勝っちゃいますよ」ぐらいは報告する。これは冗談だけど(笑)、「頑張ります」って。
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