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特別 カメルーン戦後 オシム監督コメント

6月15日

■ イングランド戦の試合終盤でのオウンゴールと同じような場面がカメルーン戦でもあったことが心配

カメルーン戦の勝利のポイントと一番の収穫は何だと思うか?
収穫は皆さんの方で判断してほしい。大事なのは、日本のサッカーファンがこの結果をどのように受け止めるかだと思う。もちろん、今日の結果は日本のサッカー界全体にとってポジティブな結果だった。日本にもサッカーがあるということをワールドカップの舞台で示すことができたということは、2022年の招致活動にもプラスになるのではないか。まだまだ始まったばかりだが、日本のサッカーをもっとアピールするためにはこれからも良い試合をしなければならない。まだ2試合目、3試合目が残っているから、この勝利で弾みがつけばいいと思っている。
日本はこれまで逆転負けが多かったと思う。カメルーン戦で守り切れたことは評価できるか?
集中が維持できたということ。1つはグラーツでのイングランド戦であったミスをカメルーン戦で繰り返さなかったこと。それが、日本代表チームが進歩したしるしなのかもしれない。しかし、イングランド戦の試合終盤でのオウンゴールと同じような場面がカメルーン戦でもあったことが心配だ。最後は、ゴールライン近くまで最終ラインが下がっていた。5メートルしか余裕がなかった。そこでカメルーンが1点を入れられなかったのは日本が幸運だったからにすぎない。今日の試合結果は、カメルーンにとっては引き分けでもおかしくなかったと思っているはずだ。今日はたくさんの教訓にすべきこと、学ぶべきことがあったと思う。それを基礎にして、建設を始めなければいけない。今日、日本の選手たちはしっかりとしたプレーをした。それを続けられるように、出場しなかった選手は見習ってほしいと思う。
本田圭佑は本来、FWの選手ではないが、自分の専門外の役割を勇気を持って受け入れて、特に戦術面で与えられた役割を見事にこなしたと思う。つまり、勇敢であるということはコンプレックスを持たずにプレーしたということだ。そして、その勇気のご褒美として、あのゴールが生まれたのだと思う。もしかしたら、次の試合で岡田武史監督は本田にセンターバックをやれと言うかもしれないが、その場合でも本田は喜んでやると思う。大事なのは、どんなポジションのどんな場面でもクレバーにプレーすること。
本田の今日の役割は非常にデリケートな難しいものだった。今日の本田は、港における水先案内人のような役割を受け持ったわけだ。船の大きさによっていろいろな道案内をするのと同じように、本田の位置やポジションによって、どんなボールが必要なのかをチーム全体に示した。それを堅実に実行したということだ。本田が得点を挙げたから褒めているわけではない。彼がチームの中で機能したということだ。彼が前線でボールをキープしている時間に、選手たちは休みを取ることができた。それをほかの選手たちも、本田の役割として理解していたと思う。
カメルーンは保守的な戦いをしていたが、試合にどのような影響を与えたと思うか?
カメルーンはここ15年から20年間に100人以上の優秀な選手を送り出している。そのため、カメルーンは個人プレーのメンタリティーにとらわれていたと思う。個人的に良いプレーをしようと個人プレーをし、それが結果として悪い展開を繰り返すことになった。サッカーは団体競技だからコレクティブ(組織的)なプレーが必要だが、カメルーンの場合は個人だった。ほかのW杯出場国では、伝説の域に達しているような有名な選手は外して、集団でプレーできる選手をそろえる傾向にあるが、カメルーンはそうではなかった。
カメルーンは軸になる選手として、元バルセロナで今はインテルでプレーしているサミュエル・エトーしかいなかった。しかし、エトーだけがプレーをしてカメルーンが勝てるわけではない。エトーにも限界がある。日本にとって、今日のカメルーンはエトーだけを抑えてしまえばおしまいだというチームだった。巨人ゴリアテの役割をカメルーンが担い、小柄なダビデの役割を日本が担っていたという構図だった。
だから心配なのは、本田が舞い上がってゴリアテになったかのような勘違いをしないかということだ。本田に言ってほしい、君が1人だけでプレーしたわけではなく、ほかにも10人がいたんだよと。それが思い出せないようであれば、本田にとっても、日本代表の未来にとっても良いことはないだろう。
今日の試合に限って言えば、本田はデリケートな役割を見事にやったし、褒美としてゴールも決めた。しかし、これは彼のキャリアの始まりでしかない。メディアの皆さんも、今日のゴールだけで本田をヒーローだと持ち上げないでほしい。もし明日の一面がすべて本田ということになれば、日本の未来は危ない。ヒーローは1人ではなく全員だ。もし本田がゴールしたことでヒーローになったとするならば、トラップ技術が巧みでGKの上にボールを浮かすキックができればみんながヒーローになれるということだ。しかし、そうではない。ヒーローは自分の一生と自分の命を懸けて何かを守る存在のことだ。
日本代表は今日の勝利にかかわらず、ノーマルなチームであってほしい。次の試合で負けたとしても落ち込むことがないように。まずは、今日の試合から学ぶことだ。なぜなら多くのミスが出たのだから。特にメディアの皆さんは選手やスタッフの気持ちを考えて記事を書いてほしい。応援する気持ちで書いてほしい。チームがノーマルな方向で団結できるように、メディアの役割はヘルプすること、サポートすることだ。チームの雰囲気を台無しにすることではないと思う。今ごろカメルーンの新聞記者は、チームが修復不可能になるような記事を書いているかもしれない。日本の皆さん、お願いだから冷静になってほしい。
今日は、特に日本のディフェンス陣が良かった。サイドの若い選手たちが頑張っていたと思う。
日本はオランダ戦でどのような戦いをするべきだと思うか?
当然、オランダはこの試合を見ているはずだ。オランダはまず、カメルーン戦の最後の15分のように、最初から猛攻を仕掛けてくるだろうということだ。そういう意味で、大会の1戦目は難しいもの。カメルーンの選手1人1人に比べ、オランダやデンマークの選手がそんなに実力で変わるとは思わない。それに対して、日本が組織的に我慢強くプレーできたということを、オランダやデンマークは警戒してくるかもしれない。だから、どちらが相手にコンプレックスを持つかということだ。日本は個人能力のあるカメルーンに勝つことができたのだから、オランダ戦でコンプレックスを持つ必要はない。
オランダ戦に向けて岡田ジャパンにメッセージを
一言で伝えるとすれば、陶酔状態になるなということだ。舞い上がるなということ。まず、頭を冷やして冷静になれと。そして、今日の試合を振り返って分析してほしい。良い部分と同時に悪い部分もしっかりと分析して、良い部分は次の試合で繰り返せるように。もっと大事なことは、ミスがあった部分を繰り返さないこと。間違いを繰り返さないことができれば、それは進歩したということだ。