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帰国後会見

7月1日

■ 人間万事塞翁が馬

はじめに
われわれの予定より少し早い帰国になってしまったことを、残念に思っております。できればもう1試合、1試合でいいからやらせたかった。なぜなら、このチームは本当に素晴らしいチームだったんで、もう1試合やらせたかった。出場している選手、していない選手関係なく、皆がチームが勝つためにということを考えて、そのために何をするんだと。チームが勝つことを前提に皆が動いてくれた、考えてくれた。自分たちで考えて、自分たちで戦って、僕もたくさんのチームを作ってきましたけど、その中でも1、2を争う素晴らしいチームだと思っています。
ピッチの中でも日本の代表として、日本人の誇りをもって、脈々とつながっている日本人の魂をもって戦ってくれた。この選手たちを本当に誇りに思います。それとともに、こういう素晴らしい選手たち、スタッフと一緒に仕事ができて本当に幸せだなと思っています。
また、サッカー協会、Jリーグなど、関係者の皆さまのサポート、そしてスポンサーの皆さまの支援、またこのチームを信じて応援し続けてくれた人たちの思いは伝わりました。その1つ1つの思いは小さいかもしれませんが、どの小さな思いもなくては今のわれわれはなかったと思っています。そういう意味で、サポーター、関係者の皆さまに心より感謝申し上げます。
われわれのW杯は終わってしまいましたけれど、選手たちはまだまだ前に向かって進んでいかなければいけません。彼らはいろんな場所でこれから良い時もあり、悪い時もあり、懸命に前に進んでいくことだと思います。わたしが一緒に仕事をすることはないかもしれませんけど、常に彼らを応援して、成功を祈って、幸せを祈ってやりたい。是非多くのサポーターの皆さま、メディアの皆さま、ここにいる彼らを温かい目で見守ってやってほしいと思います。ありがとうございました。
グループリーグで日本は見事に2勝を挙げた。ベスト16に勝ち上がった要因、プレー面で、日本サッカーのどんな長所がそれを実現したか?
そんなに簡単に分析できる問題じゃないんですけど、ひとつは基本的に、日本人の良さを生かそうと。一番最初に言った、接近・展開・連続ということ。運動量で負けない。ボール際で負けないという基本的なことを忠実にやり遂げた。本当に一瞬のすきを与えたらやられると。おそらく互角の戦いをすれば、そこそこいきます。同じ数ぐらいのチャンスを作るでしょう。でも、これは誰が悪いというのではなくて、日本のサッカー、アジアのサッカーの欠点としての決定力の差で負けてしまうと。
それならどうしよう、というところの考え方を選手たちがイングランドやコートジボワールとやって肌身で感じて、これぐらいまでなら自分たちでこういうことができるな、これ以上やりすぎたらカウンターでやられるなと、そういうものを自分たちで感じ取って、一戦一戦成長していったと。それが一番大きな要因じゃないかなと思っています。
日本のプレーヤーがこういうところを磨いていけば、さらに上に上がっていける。そういうふうに感じているものはあるか?
それは環境だと思います。あのW杯での試合を年間5試合、6試合、南米予選やヨーロッパ予選のような試合をやっていれば、彼ら(日本代表選手)は必ず伸びます。もっともっと、そういう厳しい環境での試合、プレッシャーの中での試合、親善試合でなくて相手が本気でやってくる試合、そういうものをたくさん経験させてやりたい。それがあれば彼らは必ず伸びると感じました。
監督に就任して2年半、順調に思い通りにチームを作ることができたか。それとも、山あり谷ありがあったのか?
チーム作りというのは、チームというのは生き物ですから。予定通りなんか絶対にいかなくて、2年後にこの選手が調子良くなるなんて、分かるわけないんで。その時その時にどうだろうと、いろんな予想、そして現状でのベストのメンバー。ただ変えちゃいけないのは根幹となる考え方、コンセプト。そういうものは全く変えずに、その中で、やはり予選を頑張ってくれた選手の中で今回入っていない選手もいます。これは仕方のないことで、そういうことは山あり谷あり、チーム自体も良い時もあるし悪い時もある。
しかし、目指すところは変わらず、やることは変わらずという意味では、表面的では山あり谷ありで、わたし自身も苦しんだこともたくさんありましたが、あまり変わらずにやってきたかなと思っています。
しばらく休養するという情報が日本にも伝わってきているが、その後にどのような形であれ日本のサッカーに携わっていくのか?
僕らの仕事というのは、どういうことをやるにしても、自分が「やる」と言っても向こうが「いらん」と言えば終わりなので。その先のことはまったく考えていません。
大勢のファンが空港に集まった。空港から会見場に向かうバスで、笑顔で手を振っていたが、どんな思いで声援を受けていたのか?
正直、あれだけ多くの人が来てくれたことにびっくりしました。あそこを出た瞬間に、「なんじゃ」と思ったんですけど。それくらい自分たちの感覚と差があったので。ただ、あれだけ多くの人たち、特に若い人たちが目を輝かせてくれている、生き生きとしている姿、それを見るのが僕は大好きなので。日本代表がトルコに負けたときも残念でしたけど、彼らの生き生きした姿を見ることができなくなるのが非常に残念だと。そういう意味で、今日空港に来てくれた若い人たちが目を輝かせてくれている姿にじーんときました。彼らの応援があって、われわれも勝てたんだな。あらためてそういう気持ちです。
次、また日本代表監督として、という思いはあるか?
先ほども言いましたけど、オファーをもらわないことには僕がやると言ってもやるわけにはいかないので。ただ、僕としてはこれを最後の仕事と思って全身全霊をかけてやってきました。そういう意味で今、ここから4年間やっていくというパワー、熱意は今の時点ではまったく、とてもじゃないけどないです。そういう意味で、おそらく代表を4年間やるということはないんじゃないかと思います。
応援してくれた子供たちにメッセージを
代表選手たちにも同じことを言ってますが、これからサッカー人生、それ以外でも、いいときばっかりじゃない。いいときもあれば悪いときもある。でも悪いときというのは必ず、それがその人に必要だから。何のためかといったら、次に成長するため。そういう意味でうまくいかなくなったり、風が吹いたときに、簡単にあきらめない。そして絶対にネガティブにならないで立ち向かっていく勇気、そういうものを今回この選手たちが示してくれた。子供たちにはぜひ、つらいこと苦しいことがあっても、簡単に逃げずに、この代表チームの選手たちのように見せてほしい。僕は座右の銘に「人間万事塞翁が馬」としています。そういう意味で、この言葉を子供たちに贈りたいと思います。