僕はプレーヤーであり、Jリーグを見に行ったり、日本代表を見に行ったり、指導をしたりという人間です。

岡田監督を初めて知ったのは日本代表監督に就任した時でした。

「岡ちゃん、岡ちゃん」と中年アイドルのようにワイドショーで特集されたりして、とても注目されていました。 初めての采配が日本代表監督という物凄いプレッシャーがあった事でしょう。 岡田監督には「日本代表は絶対に勝たなくてはいけない」という事の重大さを理解する力と、 プレッシャーから逃げないで受け止めるだけの器量があるだけに余計に大変だったと思います。 緊張しきった顔で会見していたのを今でも覚えています。

その後Jリーグで輝かしい実績を残して、また代表に帰ってきました。 オシム監督という世界でも屈指の監督のあとを継ぐのは、これまたプレッシャーだと思いますが。。。

ですが、僕はオシム監督よりも岡田監督の方が日本人の本質を理解していると思います。 何故なら、代表クラスになれば、今更技術体力云々なんて監督が注意する事ではありません。 戦術にしても一流同士の監督ですから大差はないでしょう。

一番大切なのはモチベーションだと思っています。 「国を代表するものが何故負けてはいけないのか？」 それを通訳がいくら訳しても無理だと思うのです。

僕は１９９８年のワールドカップはよくやったと感じました。 トルシエの２００２年の時も限界までやったと思います。 でも、ジーコの２００６年はどうしても許せませんでした。 頑張っている中田英寿がかわいそうで、怒りすら覚えました。

サッカーには誰にでも出来る事が一つだけあります。 それは走る事です。 大人になってから技術力や戦術理解力を高めるのは非常に難しいです。

オシム監督が「壊す事は簡単ですが、作り上げる人生の方が素敵だと思いませんか？」と言っていました。 壊すというのがディフェンスで、作り上げるというのが攻撃です。 ですが攻撃の選手で世界に通用するような日本人選手はもういません。 綺麗事を言っても、最後は個人の力がものをいうのは、他のスポーツと一緒です。

一所懸命に走って、相手の邪魔をして、 取ったらすぐにカウンターで攻める、身体能力に劣る日本人に出来る事はこれ以外にありません。 何事にも根気よく取り組めるのが日本人の長所です。

ただ走るのは、それはそれで辛い事です。 それはプロでも同じでしょう。 でもそこに、「この人の為に頑張ろう」とか「絶対に負けたくない」という気持ちがあれば、 普段より頑張れます。

僕が岡田監督を応援するのはマリノスでの功績をつぶさに見たからです。 あの頃のマリノスは「ドーピングでもやってるんじゃないか？」と疑いたくなるほど、 選手たちが頑張っていました。 十代のまだ無垢な頃ならまだしも、大人になってから吐くほど頑張るというのは凄い事です。 でも選手達は幸せそうでした。

僕は今回の日本代表がワールドカップでグループリーグを突破出来るとは思っていません。 でも「やれる事をやって負けたのなら、胸を張って帰れるはずだ」とオシム監督が言ったように、 日本代表には胸を張って南アフリカから帰ってきて欲しいです。 岡田監督ならそれが出来ると思っています。